greenえとせとら Page 007
 
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霧雨の中の邂逅
 
 
photo01
 わずかな情報だけを頼りにサトウキビ列車を追っていたあの頃、走行中の原料列車に遭遇する機会は滅多になく、カメラのシャッターを切る一枚、一枚がとても貴重なものでした。
 
 
 私が台湾の鉄道を追いかけ始めて間もない頃、まだ現地に知人が少なかったため、サトウキビ列車の撮影はすべてが手探りの状態でした。
 
 果たしてこの広い台湾のどこにサトウキビ鉄道が走っているのか。「糖廠」の文字を探して台湾の地図を穴が開くほど見つめてみたり、移動中に原料列車のホイッスルらしき音を耳にすると、それが聞こえた方向と時間をメモ帳に記して、運行ダイヤを推測したりしていました。
 
 今、私がカメラを手に立っているのは、仁徳糖廠本州線が台湾鐵路局の線路と立体交差している地点から少し歩いた踏切の脇です。
 
 過去にここで撮影された原料列車の写真を見ての訪問ですが、実際に現地へ行ってみると、細いレールは所々で泥濘とゴミに埋まり、へろへろのガタガタ状態。この線路は生きているのか、すでに死んでしまったのか、直前まで不安と期待が交錯していました。
 
 しかし、サトウキビ鉄道の正確な運行情報を持ち合わせていない私は、この線路が現役であることを信じて、いつ来るやも知れぬ列車をただ待つより他に仕方がありません。冬の冷たい霧雨が足下を濡らす中、遠くにサトウキビ列車のホイッスルが聞こえないかと、全神経を両の耳に集中させます。
 
 どのくらい時間が経ったでしょうか。線路際を渡る風の向こうに、ふと「パーッ」「パーッ」という、かすかなホイッスルを聞いたような気がしました。
 
 やがて線路の彼方にぽつんと、小さなオレンジ色の"点"が現れ、しばらくするとまたホイッスル。「来た…、か?」 カメラを握る手に思わず力が入ります。
 
 遠くに見えていたオレンジ色の点は、ゆっくりですが確実に大きくなり、ついにはそれが機関車の前面であることがはっきりと認識できるようになりました。カメラのファインダーを覗くと、編成の先頭に立つ日立牌が、ゆらゆらと左右にボディを揺らしながら、こちらへ走ってくる様子が分かります。
 
 待ちに待ったサトウキビ列車との出会い。せっかくのチャンスをふいにしないよう、手元のカメラの設定を何度も、何度も確認しました。露出は正しいか。ピントは合っているか。構図は問題ないか。
 
 サトウキビ列車はもう私のすぐ目の前にまで迫っています。高まる鼓動、緊張のあまり震える両手。そして、予め狙っていたポイントに機関車が達した瞬間、私はカメラのシャッターを切りました。
 
 撮影を終えてホッと一息つく私。その横を数多の甘蔗車が、ガチャガチャという単調な音をたてて、次々と通り過ぎていきます。そして、日立牌の牽くサトウキビ列車は、ちょっと物憂げな感じのホイッスルだけを残して、雨に煙る景色の彼方に消えるように去っていきました。

 


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