サトウキビを積んだ小さな列車が線路の上を往来し、子供たちが水車の横でサトウキビをかじる…現代の若者には絵本の中にだけ存在する世界なのかも知れません。一方、年輩の人にとってそれは、昔日の記憶を呼び起こす実にノスタルジックな情景です。台糖の「五分仔車懐舊之旅」では、そうした様々な世代の人々が、列車に揺られながら過ぎ去りし時に思いをはせます。 表題の「五分仔車」という言葉は、鉄道のレールの幅(軌間)に由来しています。世界の鉄道でスタンダードとされるレールの幅は1435mm。これに対し、サトウキビを運ぶトロッコの軌間は、762mmしかありません。国際的な標準軌間の約半分(五割)の幅しかないので「五分仔車」という訳です。
台湾の製糖産業が落日を迎えるにつれ、各地のサトウキビ鉄道も灯火が消えるように次々と廃止されました。しかし、関係者の尽力により、かつての「五分仔車」が観光用のトロッコとして復活。現在、新營糖廠(台南縣新營市)の他、溪湖糖廠(彰化縣溪湖鎭)、蒜頭糖廠(嘉義縣六[月卻]郷)、烏樹林糖廠(台南縣後壁郷)、橋頭糖廠(高雄縣橋頭郷)の5つの糖廠で体験することができます。 このうち、新營糖廠の「五分仔車」は、旧工場に隣接する中興站から柳營郷の營長牧場(八老爺站)までの約4.6km。台糖が運行するトロッコ列車の中で最も長い距離を走る路線です。片道の所要時間は約30分。折返し駅の八老爺站で30分ほど停車した後、再び起点の新營糖廠に戻ってくるダイヤとなっています。 田園風景の中をのんびりと走る「五分仔車」。車窓からは沿線に植えられた稲やサトウキビ、バナナといった数十種類の植物を観賞することができます。往復の車内で流れる楽曲は台湾語のいわゆる"懐メロ"。美しさの中に素朴さの溢れる旋律に、ぜひ耳を傾けてみて下さい。 新營糖廠では「五分仔車」の他にも、名物の冰淇淋(アイスクリーム)や様々な台糖ブランドの商品を販売。週末には懐かしい「古早糖」(ザラメ砂糖のようなもの)も製造され、工場全体が砂糖の甘い香りに包まれます。昔ながらの方法で作られた「古早糖」は、出来上がったその場で味見することも可。完成までに2時間以上を要するので、先にトロッコ列車に乗車して、帰りに商品を受け取る形でもOKです。
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